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犬の椎間板ヘルニアの症状・原因・検査・治療法について|獣医師が解説 千葉県船橋市・鎌ヶ谷市のハロー動物病院
船橋市・鎌ヶ谷市・白井市の皆さまこんにちは。
千葉県船橋市・鎌ヶ谷市のハロー動物病院です。
今回は椎間板ヘルニアについて解説いたします。
『椎間板ヘルニア』とは、
脊椎と脊椎のクッションの役割をしている「椎間板」が、脊髄が通る脊柱管内に飛び出て、脊髄を圧迫・障害することで首や腰の痛み、足の麻痺などを引き起こす病気です。
◆原因
椎間板は、髄核とそれを取り囲む線維輪で構成され、プロテオグリカン(水分保持に重要)やコラーゲンが主成分となっています。犬種による遺伝的な問題、加齢、物理的ストレス、椎体の不安定性など、様々な要因で椎間板のプロテオグリカン量(水分保持に重要)が減少し、弾力性や柔軟性が失われることで発症します。
椎間板ヘルニアは、髄核が線維輪を越えて脊柱管内に逸脱する「ハンセンⅠ型」と、線維輪が脊柱管内に逸脱する「ハンセンⅡ型」に分類されます。
ミニチュア・ダックスフンド、ペキニーズ、ウェルシュ・コーギー、アメリカン・コッカー・スパニエル、シー・ズーなどは軟骨異栄養性犬種と言われ、急性に症状が進行するハンセンⅠ型が多いとされています。その他の非軟骨異栄養性犬種では、徐々に進行するハンセンⅡ型が多いとされています。
◆症状
主な症状は、
軽症であれば、首や腰に痛み、違和感のみを生じます。首や腰を触ったり抱き上げるときにキャンと鳴く、首を挙げられず上目遣いをする、腰が湾曲している、動かないで震えているなどが具体的な例です。より重症度が進むと足の麻痺や排尿障害など神経学的な異常がみられてきます。足がふらつく、足を裏返しのままついている(ナックリング)、起立・歩行ができない、おしっこが出ない・漏れるなどの症状が生じてきます。
重症度を、頸部の椎間板ヘルニアでは3段階、胸腰部の椎間板ヘルニアでは5段階のグレードに分けて分類します。
頸部椎間板ヘルニア
グレードⅠ:知覚過敏、初発の頸部痛
グレードⅡ:繰り返す頸部痛、歩行可能な神経学的異常
グレードⅢ:歩行不可能な四肢の麻痺
胸腰部椎間板ヘルニア
グレードⅠ:知覚過敏。背部痛のみ
グレードⅡ:歩行可能な不全麻痺(後肢のふらつき)
グレードⅢ:歩行不可能な不全麻痺(後ろ足をうまく動かすことができない)
グレードⅣ:完全麻痺、排尿障害
グレードⅤ:深部痛覚の消失(鉗子で骨をつまんでも痛がらない)
脊髄損傷が重度となるグレードⅤでは、進行性脊髄軟化症という、脊髄の壊死が急速に進行し最終的には呼吸不全で死亡してしまう病気が5-10%で発症する可能性があります。
このような予後の判定や、治療方針の決定をするためにも重症度分類は重要になってきます。
◆検査
検査としては、神経学的検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などがあります。
神経学的検査では、四肢の反射や痛み、知覚の状態、麻痺の程度などを触診や打診器を用いて調べ、大まかな病変部位の特定を行います。またこの検査で重症度も判定していきます。
レントゲン検査では主に、神経症状を起こすような脊椎やその他骨格の異常がないかを調べます。基本的に椎間板や脊髄はレントゲンではみえないので、直接、椎間板ヘルニアを診断することはできませんが、他の疾患を除外するためにも重要な検査となります。
CT検査では、レントゲンより微細な病変を確認することができます。また、脊髄造影CT検査を行うことで脊髄の圧迫を確認することもできます。
MRI検査では、脊髄や脳脊髄液、椎間板の状態を確認することが出来ます。脊髄そのものを評価できるので、椎間板ヘルニア以外の脳・脊髄疾患を鑑別することもできます。
CT、MRI検査は、全身麻酔が必要ですが、外科療法を行うには必須の検査となります。
実施できる施設は限られますが、当院では紹介という形で近隣の専門施設や大学病院と連携して検査を行なっています。
◆治療法
治療法には、保存療法と外科療法があります。
首や腰の痛みだけであったり、軽度な麻痺で歩行が可能な軽症例(グレード1~2)では主に保存療法が選択されます。保存療法は、ケージで安静にする、薬剤で痛みのコントロールや脊髄保護をする、リハビリテーションなどが主体となります。サプリメントの使用やレーザー・鍼治療による緩和治療を行うこともあります。
これらの保存療法を行っても痛みや機能回復が見られない場合や、グレード3以上でより重度な神経症状がある場合は外科療法が適応となります。頸部ではのど側から椎体に穴を空けるベントラルスロット術、胸腰部では椎体の側面を削って圧迫物質を除去する片側椎弓切除術が多く用いられます。当院でも胸腰部椎間板ヘルニアに対して、片側椎弓切除術を行なっています。
椎間板ヘルニアは急に発症し、強い痛みや歩行の異常がみられるので驚かれることも多いと思います。発症から治療までの時間が早い方が治療成績が良いと言われています。少しでも変わった様子があれば、早めに当院までご相談いただけたらと思います。